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岩手県の南部に位置する気仙郡住田町。町の面積のうち90%を森林が占める典型的な山村です。町有林の面積は日本一。いま、この町では「森林・林業日本一の町」を合い言葉として、林業復興を目指しています。
住田町で林業再生のシンボルとなっているのが、製材工場の「協同組合さんりくランバー」と、集成材工場の「三陸木材高次加工協同組合」、住宅部材の加工を行う「けせんプレカット事業協同組合」で構成されている「木材加工団地」です。つまり、山から切り出した材木を加工団地に運び込めば、集成材にした後、住宅部材に加工して出荷することができるのです。
取材に訪れた際、どの工場にも若い人が多く、住田町の林業復興策が決して夢物語ではないと感じました。
“長持ちする家造り”となると、これまでは無垢材が使われるのが一般的でした。しかし、住田町は集成材に特化しています。これには大きな理由がありました。
話は平成5年にさかのぼります。「けせんプレカット事業協同組合」の泉田専務は、「地場産材の消費を拡大するには、材木の乾燥が肝要であり、それには集成材しかない」と考えていました。無垢材は乾燥が難しく、含水率が30%以下になると割れたり暴れたりするため、許容範囲と思っても、大工からはじかれたと言います。その点、集成材は十分に乾燥させた材を接着していることから、狂いが少ないという利点がありました。強度的にも集成材は、無垢材よりも優れている(一般的に約1.5倍の強度)と言われており、付加価値も高くなると考えたのです。
この集成材に興味を示したのが、スモリ工業でした。同社は「山の職人さんを守りたい」との思いから、平成8年から国産の無垢材への切り替えを開始していました。しかし、当時の材木業者からは、十分に乾燥していない材木が納入されていたのです。しかも、スモリの家のセールスポイントは、当時から高気密・高断熱。当然のように入居後、構造材などの乾燥が進んで狂いが生じ、「バリバリと音がする」、「壁があばれる」など、お客さまからのクレームが相次いでいたのでした。
集成材を普及させたい住田町側と、クレームを解決したいスモリ工業。両社の思惑は一致し、以降、スモリ工業は、住田町産の集成材に切り替えました。これが 住田町の林業再生を強力に後押し始めます。というのもスモリ工法は材木使用量の多さ(通常の木材住宅との体積比で150%)に特徴があります。ただでさえ 1棟あたりの材木使用量が多いのに加え、安価なグリーン材が使われることの多い羽柄材に まで、住田町産の集成材を使い始めたのですから。しかも、高気密、高断熱、高耐久に加え、正直をセールスポイントとしたスモリ工法は人気があり、着工数が 順調に伸びました。必然的に住田町産の集成材がたくさん活用されるようになり、森の再生に一役を買うようになったのでした。
また、スモリ工業では、基礎工事が終わった現場での構造材の組み立て(建方)も、現地に依頼しはじめています。これは販売代金のうち、構造・建方工事費用を、そのまま生産地域に環流したいとの思いからでした。また、この方法だと最短で1日で構造までを完成させることができるため、良い乾燥状態を保ったまま建てられます。そして建築コストの低減にも効果的など、多くのメリットが生まれました。
このように、住田町とスモリ工業は、お互いにメリットを生みだしながら、「川上と川下を結ぶ家造り」が持続するシステムを構築してきたのです。
もう一つ特筆に値するのが、スモリ工業と住田町ともに、環境問題を意識する気持ちを共有し、お互い研鑽し続けていることです。たとえば住田町では気仙地方森林組合が中心になって、平成16年にFSC森林認証を取得しました。また、木材加工団地では、廃材を木屑焚きボイラーで燃やし、その熱により暖房や材の乾燥を行っています。昨年にはボイラーの蒸気を利用したバイオマス発電所も設置しました。発電所の排熱(温水)でさえ、イチゴなどのハウス栽培に活用しはじめています。「けせんプレカット事業協同組合」でも、おがくずからペレットの生産を開始するなど、徹底して低炭素化への取り組みを推進しているのです。
一方のスモリ工業も、リデュース、リユース、リサイクルに加え、ごみになるものを使わないリフューズに取り組んできました。今年7月には、国土交通省が公募していた「超長期住宅先導的モデル事業」にも採択されています。この採択が後押しして、これからも着工数が伸びを見せるのは想像に難くありません。
川上と川下で家造りかかわる人々が、「森林を守りたい」という思いのもと、誠意を持ってお互いのメリットを追究しあう。加えてそれぞれのフィールドで努力を惜しまず、魅力を高めるために研鑽し続ける。住田町とスモリ工業の事例は、こうしたことこそが国産材活用の大きな鍵になることを物語っていました。
用語解説
- 含水率
- 木材にどのくらい水分が含まれているかを比率で表したもので、JAS規格では含水率18〜20%を乾燥材の規格としている。含水率が高いと木材腐朽菌や、シロアリの被害を受ける可能性が高まる。
- 羽柄材
- 垂木、間柱、胴縁などに用いられる木材の総称。ボードの下地などには、一般的に安価なグリーン材(生木)が使われることが多い。
- グリーン材
- 含水率の高いままの材を未乾燥材。日本では生木、生材などとも呼ばれる。
- FSC森林認証
- 森林の管理や伐採が、環境や地域会に配慮して行なわれているかどうかを厳格な基準で審査する国際的な制度。認証された森林から生産される木材や木材製品には、FSCマークを表示することが義務づけられている。






